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「魔法生徒極楽3匹娘 第60話(GS+ネギま)」

隆虎 (2011-08-19 01:26)
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 ネギたちが修学旅行に出かけた朝の出来事である。
「はにゃー!」
 悲鳴を上げてベッドから転げ出る少女、エヴァンジェリン。
「ヤ、やめっ、このっ!」
 そして見えない敵から逃れるように転げまわる。
「…お嬢様…酸素欠乏症にでも?」
 執事服の少年、茶々丸シリーズの集大成…と超が言っていた…
執事少年タイプのガイノロイド、絡繰ハーマイオニーが物音に気付いて駆け込んできて…主人のあまりの狂態に涙(?)する。
「だ、誰がそんなわけの分からん病気になるか! 制服を用意しろ!」
 エヴァンジェリンは笑い転げながら時計を確認。9時10分。HR開始時間だ。
「茶々丸はどうした! なぜ起こしに来なかった!」
「姉者は修学旅行でございます。お嬢様」
 制服を用意しつつ、ハーマイオニーは質問に答える。
「何!? 茶々丸は修学旅行だと!? 私はどうするんだ!?」
「お嬢様は麻帆良市の外には出られないので欠席と伺っております。
お嬢様は休日は起きるのが遅いので起こさずにいたのですが」
 首をかしげるハーマイオニー。
「違う! あのポンコツは私を置いていって、私をどうするつもりなんだ! 奴は私の従者だろう!」
 威厳を持ってそう叫ぼうとしたが…全身を襲うくすぐったさに悲鳴を上げて転げまわる。
「…何をなさっているのですか?」
「登校地獄の呪いだよ! 授業時間に学校の敷地の外にいると全身を苦痛が襲うんだ!」
「…笑いながら説明されても、あまり痛かったり、熱かったり冷たかったりといった苦痛を受けていそうには見えませんが」
 ハーマイオニーの思考プログラムは三羽烏がめいめい勝手なものを組み込んだせいでなかなかに迷走している。
しかし少なくとも、3人とも主人に対する敬意というプログラムは入れていないようだ。とエヴァンジェリンは思った。
「あのふざけた奴のかけた呪いが、そんなまっとうな効果のわけがないだろう!」
 エヴァンジェリンがネギ先生の父であるナギにかけられた呪い、登校地獄…
それは授業時間に学校の敷地内にいないと全身に無数の手やら羽毛やら筆やらでくすぐられるかのような耐え難い苦痛を与えるという恐ろしい呪いだった。


「よーし! 関西限定のレアカード全部集めちゃうよー!」
 気勢を上げる早乙女ハルナ。彼女たちはホテルをエスケープしてゲーセンに来ていた。
当然向かうのは『魔法王』の筐体である。
「修学旅行の期間は5日間。レア全てを集めるつもりなら1日たりとも無駄にはできないデス」
 静かに闘志を燃やす綾瀬夕映。
「関西限定カードってどんなのがあるのかにゃー?」
 ゲーセンの壁に貼られたポスターを見ながらふむふむと考えるのは明石裕奈。
「期間限定カード、ぽんこつ大魔王。何これ、トークン出す条件楽すぎ。ターンに3つは出せるっスよ?」
 裕奈と一緒にポスターを見ていた春日美空が一番上に書かれているカードを見てあきれた声を出す。
「ま、とにかくやってみよーじゃないか。ポスター見てたってカードは手に入らないよ」
 そんな二人を筐体に座らせるパル。
「さーて、私と夕映の友情パワーを見せるよー?」
「友情? 何ですかそれは?」
 暑苦しい友情パワーとか理解しない夕映は関西限定の謎ドリンクを自販機から大量購入しつつ、パルの発言を否定する。
「友情パワーなら私と美空だって負けないさ! ね? みーちゃん」
「え? ああ、うん」
 裕奈に突然肩を組まれて目を白黒させる美空。
裕奈と美空は普段グループも違うし、それほど仲がいいわけではない。
一応、美空も運動部員なのだが運動部グループのメンバーとは思われていない。シスターのほうが印象が強いようだ
「でも私このゲームそんなに強くないっスよ?」
「大丈夫。実はパルもあんまり強くない」
 このゲーム、クラスで強いのは万能の天才・超と鬼引きの桜子である。
夕映・裕奈は中の上。パルは実のところ顔に出やすいのとそれほど引きがよくないので下位チームだったりする。
「…て、美空っち何そのカード!?」
 対戦を始めてしばらく後、美空が出してきた見たこともないカードにパルは声を上げる。
「ソードマスターチェストとサンデーオクラ? 事情があって前にちょっと集めたんスよ」
「九州限定レアカードじゃん!? そのカードがデッキに入ってるってことは…」
「当然、愛の野菜地獄デッキっスよ! 『人面トマト畑』でじわじわ苦しむがいい!」
 食べて食べて私を食べてー! とミサイルのように飛んでくる人面野菜がパルの操る魔法使いに襲い掛かる。
「ついでに『人面カボチャ』追加! 天と地と聖霊の御名において。エイメン」
 カボチャの爆撃によりパルの魔法使いは野菜くずの波に飲まれ倒れた。
「くっそー、にっくきハロウィン飾りめ…」
 そんな彼女たちに迫る影…
「よー、姉ちゃんたち修学旅行? よかったら一緒にあそばねぇ?」
 地元のナンパヤンキーたちだ!
「えー? どうしようかなー…」
「ちょっと、パル、相手にする気デスか?」
 脈がありそうな反応のパルだが、ナンパ男の相手などしたくない夕映が袖を引く。
「…あれ? 同級生?」
 しかし、彼らはそんな彼女を見て戸惑った顔をする。
「…そうですけど…」
「…ごめん、忘れてくれ」
 なぜかすごすごと引き下がるナンパヤンキー。意外な展開にきょとん、となるパルと夕映。
「…さすがに小学生はやばいよな…」
「せめて中学生ならな…結構ポイント高かったんだけど…」
 立ち去ってゆくヤンキーたちの言葉に真っ赤になる夕映。
面倒な相手がいなくなったのはいいが、中三にもなって小学生扱いは腹に据えかねるのである。

「…良し。うまくいった」
 こっそりと目立たないように魔法を使って、ナンパ男たちを追い払った美空。
なにげに運が悪いくせに余計なことに首を突っ込みたがるパルや夕映は美空からすると面倒なクラスメイトだった。
「あれ? 美空何してんの?」
 そんな彼女の動きに気付いて首をかしげている裕奈。
「(あ、そっか。ゆーなは記憶消されてても魔法使い見習いだから、認識阻害効かないっスか)
なんでも無いっスよ。そこに落ちてたのを拾っただけっス」
 隠し持っていた魔法のステッキを仕舞いつつ、誤魔化す美空。
「なんかの景品かにゃ?」
「多分そうじゃないスかね?」
「どっかで見た覚えあるんだけど…なんだっけ。10年位前のアニメ?」
 しきりに首をかしげる裕菜。
ひょっとして記憶消去が解けかけているのだろうか?
だとしたら、私は…どうすれば? と複雑な表情で考え込む美空。


 10年近く昔。まだ裕菜の母親が生きていた頃。美空と裕菜は親友だった。
まぁ当然といえば当然だろう。麻帆良に住む魔法関係者の家族はごくごく少ない。
学園長の孫娘である近衛木乃香が来るまで魔法使いの家の子はこの二人きり。
家族ぐるみの付き合いもありほぼ姉妹同然の間柄だった。
二人とも才能豊かとは言いがたかったが、それでも競い合い、励ましあう親友だったのだ。
しかし、その関係も裕菜の母親の死とその後の事件によって終わってしまう。
 母親をなくした親友のために何もできずにいるうちに、突然親から「もう裕菜ちゃんと会っちゃ駄目」と一方的に言われ、
無理矢理転校させられる。何もできない子供には抵抗もできず、友達から離されたのだ。
しかも、自分と同じように転校させられていた裕菜を当てもなく探し続け、何とか探し出してみたら自分のことも、魔法のことも、母親のことも覚えていなかった。
春日美空の親友であった明石裕菜という少女はもうこの世のどこにもいない。大人の魔法使いたちが『消して』しまったから。
美空がやる気なし、みそっかすの美空になったのはその日からである。

 できないことだとあきらめていたが…もしかしたら『消されてしまった』親友を取り戻すことができるのかもしれない。美空の心は揺れる。
 しかし、今になって裕菜にかけられた魔法を解いてしまったら…今度は『魔法使いではない明石裕菜』という少女を消してしまうことになるかも知れない。
彼女は明るく外交的な努力家で、当然友人だって多い。その友人たちにかつての自分と同じ思いをさせることになる。

「人生というのは絶え間なく連続した問題集、揃って複雑で、選択肢は酷薄、時間制限付き、か。
夢みたいな解法を持たない凡人の身としては、どうしたもんかね…」


「はわわわ…」
 ネギはかつて味わったことの無い恐怖にさらされていた。
「そこの少年! 体を鍛えとらんな!?
読経中に腕立て300回!
勤行中にふっきん300回!
境内までの移動は駆け足だ!」
「何言ってるのか分かりませんよ!?」
「うむ、真の男の会話とはそのようなものだ」
 ネギはマッチョな坊主頭の集団に取り囲まれていたのだ。そんな連中がお酒を飲みながら騒いでいる。
坊主たちはやたらとポージングをとりたがる。やたらと脱ぎたがる。
そしてネギにも体を鍛えさせたがる。油断していると脱がされそうになる。
 命の危険とは違う、このままでは別の世界の扉が開いてしまう。そんな恐怖だ。
「いったい何なんですかここは!?」
「ふーむ…西洋人に見せたら仏教が誤解されそうな世界でちゅ…」
 マッチョから逃げ出し、この場につれてきたパピリオと桜子にしがみつくネギ。彼の様子を見てうーむと考え込むパピリオ。
「ここはお寺なんですか!? でも皆さん…お酒飲んでるんじゃ…」
「先生、これはお酒じゃないよ。般若湯なの。だから私が飲んでも大丈夫だよー」
「般若湯なら私も飲まざるを得ないでちゅね」
 そう言いながらくぴくぴと飲む桜子とパピリオ。
「ほら、ネギ先生の、ちょっといいとこ見てみたい!」
「一気飲みなんて駄目ですっ!!」
 そしてわけの分からない盛り上がりを見せる二人。
「ボクは飲みませんからっ! 大体、ここに何しに来たんですかっ!?」
「パピリオー」
 一気飲みさせられそうになって必死に抵抗するネギ。そんなところにかけられる声があった。
声をかけたのは栗色の長い髪で着物を着て…何故かサングラスをした背の高い女性だった。
「久しぶりねー。元気にしてたかしら?」
「お姉ちゃん! お久しぶりでちゅよー」
 パピリオをハグしてなでなでしたりする背が高くて、服装の都合上よく分からないが多分すごくスタイルのいい女性。
 どちらかといえば…鳴滝4号であるパピリオの姉とは思えない美人だった。
「おお、葛の葉殿、息災かな」
「この間ひどい目に遭ったけどね。まあ元気にやってるわよ」
 周りのマッチョたちとも顔見知りのようだ。
「葛の葉さん…お姉ちゃんに似ている…」
 そんな葛の葉を見ながらつぶやくネギ。
「葛の葉さんは人妻だからねー?」
 そんなネギに突っ込みを入れる桜子。
「えっ? …いや、そりゃそうですね。だいぶ年上みたいですし…」
「女の人にそんなこと言っちゃ駄目だよ?」
 イギリス紳士を気取っているくせに微妙なところでデリカシーのないネギだった。

「…ところで、ここに来た理由でしたっけ?」
 しばらく近況報告っぽい世間話をしていた姉妹の話に入れないので離れたところでマッチョに絡まれていたネギだったが、
そんなところにパピリオと桜子が戻ってきた。
「…お姉さんに会うためだったんですか? 実は横島さんも京都の人…?」
 微妙に京都の人=敵と偏見が入りそうなネギ、ちょっと態度が固くなる。
「いや、お姉ちゃんは普段は大阪在住でちゅ。私がこっちに来たからわざわざ会いに来てくれたんでちゅよ」
「大阪と京都は電車で一時間だからね。
いやー、でもまさかぱぴぱぴが葛の葉さんの妹だったなんて知らなかったよー。何年か前に会ったときはそんなこと一言も言わなかったし」
「大阪?…京都から電車で1時間ですか…」
 桜子の言葉から葛の葉は京都から1時間ほどの距離の街に住んでいることを知るネギ。普通なら1時間なんてすぐ隣だと思うのだが…
敵対している関東と関西の本拠地の距離が東京から京都までわずか2時間ちょっとでしかない。
とすると、1時間の距離というのは日本の感覚だと結構遠いのかもしれない。それなら関西呪術協会の関係者ではない可能性もある。
 というか、魔法関係者だという証拠もなかった。最近悪いほうに考えすぎだなあ、と頭を振るネギ。
「実は私、こう見えてむちゃくちゃ強いのですが」
「…はぁ。そうだったんですか」
 しかし、ネギが気を取り直したところでパピリオが妙なことを言い出した。
また変な設定が出てきたな。自主映画に巻き込まれるのはもうごめんなのに、と嫌そうな顔をするネギ。
「事情があってお師匠様には会えないんで、お姉ちゃんに他の強いひとを紹介してもらったんでちゅよ」
「その人が偶然私の知ってる人で、ここまで案内しろって言われたの」
 パピリオは神魔族の中でもパワーはかなり強いほうではあるが、年齢のこともありどうにも経験不足なのだ。
大概の相手はそのパワー差で押しきれる…とはいえ、技術差で出し抜かれる事も時折ある。
 しかし、麻帆良に閉じこもっている限り同じく若くて経験が足りないザジくらいしか稽古相手がいない。
そこで京都奈良に修学旅行に行くついでに誰か経験をつんだ人に指導を仰ぎたい、紹介してくれと近畿にいる姉に連絡を取ってみたのだ。
「そこで紹介してもらったのが、このマッチョマンたちなんですか…?」
 確かに強そうではあるが…ちっちゃい横島さんの修行相手としては、何か設定が違うんじゃないだろうか。
ぶつぶつと口の中でシナリオに関する文句をつけるネギ。
「すまん、呼び出しておいて遅くなった」
 そうこうしている内に黒い立派な甲冑姿の体格のいい男と、…どこか茶々丸を連想させる無表情な少年が上座に現れた。
「あ、本日はお招き預かり…えーと…」
「ああ、いい。いい。子供に礼儀作法なんぞ求めんよ。ワシが毘沙門天だ。
それより、お主が葛の葉の妹…? で、親父から逃げてどこぞの武神の弟子になったと聞いているが」
「いろいろありまして」
 じっとパピリオを見る毘沙門天。目がぎらーんと…比喩表現でなく光る。
「蝶々か…なるほど葛の葉の妹じゃな」
 そして何か納得したように頷く。
「うちの妹をエッチな目で見るな!」
 葛の葉がパピリオを抱きしめて毘沙門天の視線から隠す。「うわーん、お姉ちゃーん」とべそをかいて姉にしがみつくパピリオ。
「え、エッチな言うな! 仕方ないではないか。実際に見てみないと分からんのだから」
 一体何が起きているのか。微妙に横で見ている人間は置いてけぼりである。
「神仙クラスではね、相手の正体を明らかにできるかどうかが大事なんだよー。
弱点も分かるし、相手が嘘を言ってたりすればそれも分かるの。
でもね、なんと言うか、それをされるのって裸にされて調べられるのと同じくらい恥ずかしいんだー」
「…はぁ。神仙クラス…ですか」
 麻帆良限定の四天王から一気に設定のスケールが大きくなったなぁ。という表情のネギ。
自主映画の設定だと思って聞き流している彼はポケットの中で小さくなってがたがた震えるカモには気が付いていなかった。
「まぁ、相応に実力差がないと無理にはできないけど…」
「そんな映画の設定より、早く帰らないと…明日も予定が詰まってるんですよ?」
 修学旅行は初日と二日目は集団行動。明日は奈良を見学する予定である。(一応、奈良で多少の班別自由時間はあるが)
「じゃ、さっさと始めるか。…ナタ。揉んでやれ」
「…」
 ナタと呼ばれた少年…毘沙門天と一緒に現れた無表情な少年が頷く。
「おー。いきなり坊ちゃんからですか」
「お嬢ちゃん、泣くんじゃないぞー」
 宴会していたマッチョ坊主たちが端にどいてスペースを作る。
そのスペースでいつの間にか棒を用意したパピリオと、刃をつぶした槍を持ったナタが向かい合う。
「…え? 本当にやるんですか?」
 パピリオの話を本気だとは思っていなかったネギは目を白黒させる。
パピリオは超一味の天才科学者だとは聞いていたネギだが、彼女が強いとはとても思えないのだ。
何しろ身長は鳴滝…何号だったっけ? とにかく鳴滝姉妹やエヴァンジェリンととんとん。
部活動を見ても手芸手品部。武道系の部活動ではない。
「とりあえず、アドバイスしようにも現状を見ないとしようが無いからな。
…坊やは危ないからもう少し離れていなさい」
 なにやら釈然としない表情のまま桜子・葛の葉に引っ張っていかれるネギ。
「…かかってこい」
「では、いきまちゅ!」
 瞬間的に魔力を解放し、真正面からナタに突っ込むパピリオ。
「…!」
 目にも留まらぬ連続突きを苦も無く槍で受け止めるナタ。
「てええい!」
 余裕で全て受けられるのを見て、速さでは対抗できないと見ると、今度は力で押し込む…と見せかけて急に力を抜き、棒の先に引っ掛けて投げ飛ばす。
ナタはそれに逆らわずに飛び、パピリオの棒の先をつかんで今度はこちらから押す。それだけでバランスを崩すパピリオ。
「…大体分かった。お前の師匠は孫行者…闘戦勝仏だな?」
 今のやり取りだけでパピリオの師匠を言い当てるナタ。
なお、闘戦勝仏というのは斉天大聖孫悟空の仏としての名である。
「あー…諸事情あって秘密なのでちゅよー」
「…そうか。それはどうでもいいが仙術などは習っていないのか?」
「その辺はまだでちゅ。ちょっと寿命を延ばしてもらったくらいでちゅ。…あ、そうか。タマモちゃんから習えばよかった」
「それがいい。闘戦勝仏の武芸は仙術と組み合わせながら磨き上げたものだ。…仙術が使えないと猿真似以下だ」
 実はナタ少年は昔、若くて暴れていた頃のお猿老師と戦って、父親ともどもにぼこぼこにされたことがあったりする。
負けた相手の武芸である。実は隠れて結構研究していたらしい。

「…動きがまったく見えないんですけど?」
「ま、普通の人はそうだよ」
 話し合いを終えてまた稽古を始めたパピリオとナタ少年。
彼らが打ち合い始めるとネギには『時々なんか光ってる』程度にしか認識できない。
 呆然とするネギに至極あっさりと桜子が告げる。
「ふ、普通の人って、ボクは…」
 魔法使いであって、普通の人ではないと抗議しそうになったネギ。しかし桜子のほうを見て言葉を飲み込む。
桜子をはじめ、周りのマッチョたちはきょろきょろと視線を動かしている。…同じ方向に。
「…まさか、皆さん見えてるんですか?」
 ここまで一致した動きなど練習しても無理…まさか、とは思うのだが…ネギは恐る恐る桜子に聞いてみた。
「うん。見えるよー?」
「まあ、目で追うくらいなら何とかね」
 アレと同じ動きは自分はできないと苦笑する葛の葉。
そんな中桜子の目がきゅぴーんと光る。
「…こうやって、こうやって、こうかな?」
「だ、駄目です! そっちは別の世界ですよ!?」
 日曜日の方向に走っていきそうな(?)桜子にしがみついて止めるネギだった。


「わーい。ロ○ソンが白黒だー!」
「マ。クもですー!」
「すげー! サンダース名誉大佐が和服着てる!」
「え? どこ? どこですかー!?」
「嘘だー!」
 ホテルをエスケープした鳴滝風香・史伽の双子が夜の京都で大騒ぎしている。
その後ろからテクテクと長瀬楓が付いて歩いている。
「こらこら。夜も遅いのだから騒ぐものではござらん」
 見てるのか見てないのか分からない程度の糸目でのんびり歩く楓。
「さて、エスケープしたのはよいでござるがどうするのでござる?」
 共学の学校なら男子生徒の部屋に忍び込む(いや、普通逆)とかお定まりのコースはあるが、我々はどうするのだろう?
双子に引っ張り出された楓は特に何も考えていなかった。
「京都には京都御庭番衆という忍者がいるですよー!」
「楓ねえ、一緒に探しにいきましょうー?」
 双子は楓に聞かれて、とんでもないことを言い出した。
「そ、それは無理でござるよ。拙者は甲賀忍群。対して京都御庭番衆は公儀隠密、ようするに伊賀忍群でござる。
われ等は見つかったら殺されてしまうでござるよ」
 とりあえず煙の巻くべくわけの分からないことを言ってあきらめさせようとする楓。
「えー? 楓ねえでも負けちゃうのかー?」
「まだ伊賀と甲賀って仲が悪いですかー?」
 双子は不満そうだ。どこかの漫画で出てきたらしい組織を一目見たかったらしい。
「そもそも京都御庭番衆なんてまだ居るのでござるか?」
 その漫画だって大体100年くらい昔の話だ。今も残っているのかどうか…
「まだいるともさ。…ただ、公儀隠密は伊賀忍と限った話ではないがな」
 そこに不意にかけられる声。
見ると揃いの青スーツの中年男性が3人の前に立ちふさがっていた。
「公儀隠密にはわしのような裏柳生もおるでの…」
 にぃっと笑う。どことなく狼を思わせる獰猛な笑みだ。
「か、楓ねえ、どうする!?」
 現れた敵におびえた表情をする風香。
「むむむ…」
 目の前の男の気配は…どことなくシロと同じものを感じる。
まさか、狗族…? と楓の背中に冷たい汗が流れる。
 楓とシロの戦闘力は『何でもありならかろうじて楓が勝てる』程度。
目の前の男が大人で、男性の狗族であるとしたら…シロよりはるかに強いのは目に見えている。
声をかけられるまで自分が気配に気付かなかったことが何より相手の力を証明している。
「どどど、どうなっちゃうですかー!?」
「捕まえて、お仕置きじゃ!」
「「ひぇぇーー」」
 じりじり近寄ってくる3人の相手。正面の男と同等の気配を残り二人も発している。
これは…勝ち目がないか。単純なかけっこではシロのほうが早い。逃げても無駄だろう。
それに双子という足手まといもいる。…これではどうにもならない。

「青少年保護育成条例にのっとり、保護しました」
「ご苦労様です。ほらっ、ちゃんと謝りなさい」
 3人は狗族の3人に捕まり…新田先生に引き渡されてしまった。
そう、3人の青スーツたちは警察官だったのだ。
「公儀隠密が警視庁に横滑りしたというのは事実だったでござるか…」
 がっくりと肩を落とす楓。江戸の時代の平和を影から守っていた忍者たちは結構な数が警察に流れたのだという。
「新撰組の人もお巡りさんになっていたし…」
「そう言えばそうです…」
 双子も反省(?)しているようだ。
「まったく、初日から警察のお世話になるとは…ネギ先生! ネギ先生はどこに…」
 そんな3人をロビーに正座させつつ、担任であるネギを呼ぶ新田先生。
「ネギ先生…携帯は…繋がらない。瀬流彦先生、ネギ先生知りませんか?」
 しかし、ネギは生徒につれられて出て行っているのでホテル内では見つからない。
騒ぎを聞きつけてロビーに下りてきた瀬流彦に新田はネギの行方を尋ねる。
「いえ、僕は夕食のあとは見てませんけど…」
 しかし、瀬流彦にも心当たりはない。
 うーむと考え…はっと顔を見合わせる先生二人。
「…まさか、迷子になったとか!?」
「ひょっとしたら誘拐!?」
 最悪の事態を思い浮かべる二人。
何しろ、大人扱いされて働いているネギではあるが、実年齢は10歳。来た事もない場所でふらふらしていたりしたら…何かあってもおかしくはない。

 数時間後、何事も無く帰ってきたネギに新田の雷が落ちるのだった。
なお、「担任に断って、担任同伴で親戚に会いに行った」だけのパピリオと桜子は無罪放免だった。


<あとがき>
 夏休みになりました。またまた一月以上のご無沙汰でしたが、皆様いかがお過ごしでしょう。
三匹娘の60話をお送りします。今回も駄文にお付き合いいただきありがとうございました。
 登校地獄が与える苦痛は独自解釈です。でもあの世界の呪いって痛いとか苦しいとかそういう『まともな』効果じゃない気がします。
しかし、誰も茶々丸が主人を置いて修学旅行に行っていることを突っ込まない現実に絶望した。
 美空の野菜デッキはキーやん繋がり(?)です。神父は結局あの野菜たち食べたんでしょうかね。
 美空と裕奈。同世代で秘密を共有できるたった一人の相手ですから、裕奈が魔法使いをドロップアウトしてなければきっとすごく仲良しだったと思います。
二人はリアルビブリオン。って感じで。
 『魔法によって作られた仮の人格』の人権問題。
この問題は本編ではアスナで発生しましたが、裕奈で発生してもおかしくない問題ですよね。まぁ、まったくの別人格じゃないので何とかなると思いますが、本編だとどうなることか。
 毘沙門天登場。他の3人とセットで四天王として登場する際は多聞天、七福神、もしくはソロ活動は毘沙門天と名乗ります。
なお、ナタ少年は毘沙門天の息子の一人で、有名な武神です。封神演義や西遊記に登場します。
日本ではナタクと呼ばれることが多いです。
 かなり強い武神ですのでパピリオ相手に戦った際はパピリオの攻撃を受けるだけで自分からはほとんど動いてません。
その程度のは実力差がある、ということで。
なお、フジリュー版封神演義読むと…アレが後に天界でも有数の武神・毘沙門天になるとはとても思えませんが…年月というのはバカになりませんね。
 パピリオ、仙術に関してもものすごい大家が目の前にいたことに気付く。大魔王の娘で、天界随一の武神を師に持ち、4000歳を超える大妖怪と義姉妹の関係。
…ラスボス過ぎて出番がなくなるのも仕方が無い。
 サンダース名誉大佐。秋葉原ではメイド服を着たこともあるので京都では着物くらいなら着てるかもしれない。
 狗のお巡りさん登場。彼らは伏線です(何)


 では、レス返しを

通りすがり六世さま>
 最初のカモの陰謀でのどかと仮契約しちゃう展開珍しいらしいですからね。
まき絵は…どうしてこうなったんだろう。

デフロボさま>
 まぁ、ネギはネット環境の無い田舎で暮らしていた10歳の少年ですから多少は仕方ないかなと。
…そのわりには通販とか平気でやるみたいですが。
 でも、写真がひとつ流出すれば、場所や着ている服のメーカー、一緒に写ってる人物とかはきっとほぼ全て特定されると思う程度に熱心なファンがいると思う。
…何しろ、公式ファンクラブだけで『5ケタ台がほとんどいない』ということなので、5桁ですげえと言うには、6桁なら普通かちょっとすごい、7桁なら新参者…くらいでないといけないと思うんですよね。
(事実委員長の会員証には七桁目まで0が入っていた)
総人口が12億の世界で百万単位のファンクラブ会員…? クラブに入ってないシンパ含めれば一体総人口の何%が信者なのか…
…そういえばあやかもどうしてこうなったんだろう。

むじなさま>
 ネギは(少なくともこの頃は)はっきりと白黒つけちゃう性格なので、ひとつ信用できないと全部信用しないことに>まほネット
ネギにとってカモは人間と同等な妖精だから…と擁護してみますが、対外的にはペットであることはちゃんと認識してるんですよね…
…やはり、『ペット禁止』の文字が読めなかったとか…

トさま>
 そうですね。男女が逆になってます。
…次回、黙って他所で子供を作った元妻にベル様の怒りの一撃が!?

無虚さま>
 千草の術のメインはカエルじゃなくて猿ですからね。カエル地獄は刹那にも使える程度にやさしい術なんでしょう。
正直、あの落とし穴やお酒みたいな嫌がらせ、千草サイドから見るとまったく意味が無く、敵対者の存在を教えるだけ損なんですよね。
落とし穴の下にわざわざクッションとしてカエルを置いて、落ちた人に怪我をさせないとか、敵がやったとしたら…あ、この世界ならいつも通りなのか。

天然ドリルさま>
 人望無いといっても、ナギの子という色眼鏡で見ないせいでネギに関心が無い、しかも基本的に面倒くさがりのタマモやお嬢様の安全が最優先の刹那に聞けばこうなっても仕方ないかと。
タマモは一回懐に入れると情が沸くんですが。

masaさま>
 英雄の身内になりたいんじゃなくて英雄を身内にしたい、ですかね。(微妙に違う)
まぁ、確かに常識は古くて、娘の婿はワシが決めるのが当たり前。
娘が決めた婿殿はやはり失敗じゃ。その点ネギ君ならなんら申し分は無かろう。位は思っていそうですが。


<おまけ・横島君漂流記?>
「…ちょっと、いい?」
 船の中。一気に急上昇した食糧消費量に頭を抱える横島を尻目に遊んでいた空亡に、パイオ・ツゥ(幼女)が話しかけていた。
「あの時変身した人って、誰?」
「…どれのこと?」
 パイオは空亡が変身した人物に興味があったようだ。
空亡には誰のことかわからなかったようだが。
「最後に変身した人」
「これ?」
 ぽわわんと変身する空亡。ルシオラの姿になる。
「そう。その人って誰?」
「知らないよ。よこっちの心に住んでる人だってことくらいしか」
 しかし、空亡は横島の記憶にある人物と言うこと位しか知らなかった。
「ちゃんとよこっちの頭の中を探ればどんな人か分かるけど?」
「…いや、いいよそこまでしなくても」
 空亡の提案に首を振るパイオ。
「…て、なんでまたルシオラの格好になってるんだ?」
 そんな二人に気付いた横島が声をかける。
「そう言えば何で?」
 空亡も首をかしげる。
「私、ヨコシマさんの事何も知らないと思って。この人とはどういう関係なのかな? と思った」
 そう言われて横島も頭をひねる。
「ルシオラとの関係か…一言で言うのは難しいな…
恋人であり、命の恩人であり、命を助けた相手であり、一心同体であり、ペットと主人の姉であり、将来の娘だ」
「わけがわからないよ」
 横島の説明は正しいのだが、事情を知らない二人にはまったく理解不能だ。
「難しい関係なんだよ」
「難しい関係なのかー」
 とりあえず難しい関係であることだけは理解した二人。
横島もルシオラのことをぺらぺらしゃべるほど二人に心を許していないようだ。…二人とも外見が幼女だし。
「じゃあ、どんな人? 横島の恋人だからやっぱり不死身なの?」
 ナギの影響か、横島のことを不死身のモンスターか何かのように思っているパイオ。
しかし、その発言は横島の心の傷にさくっと刺さるのだった。
「…ルシオラは、俺の身代わりになって死んじまったんだ…」
 当時を思い出し、ずーんと落ち込む横島。
しかし涙は出なかった。
かつては思い出すだけで当時の自分の馬鹿さ加減に涙が出たものだが、涙も流さずルシオラのことを思い出せるようになったのかと、そのことが無性に悲しくなる横島だった。

「モンスター使いで、発明家…」
 横島からルシオラのことを聞き出したパイオは、何かを考えているようだ。
「おや? どうしました?」
 そこに通りかかったのはアル。
パイオはアルにテクテクとちかよって…
「……とりあえず、モンスターゲットだぜ?」
 おもむろに、がしっと捕まえた。
「私はモンスターじゃありませんよ!?」


<おまけその2・次回予告>
 修学旅行二日目、奈良の見学…
「ネギ君! 今日はうちの班と一緒に見学しよー!」
「いいですよー?」
 まき絵のお願いに深い考えも無く了解するネギ。
「まき絵さんの声はあるのに姿は見えない…まき絵さんは一体どこに!?」
 機先を制されたいいんちょはまき絵の姿が無いことに混乱だ!

「今夜も修行に行くでちゅよー」
「何故ボクも連れて行くんですかー!」
 そして2日目も無理やり引っ張っていかれたネギ。
しかし、彼は奈良の修行場で偉大な魔法使いに出会うことになる!?
「祖国のために! 究極奥義・原爆! とぅーりゃっ! 落としぃ!」
「そんな魔法はいりませんよっ!?」
「ならば茶でも一服いかがかな? …ふう。暗殺の後の茶は格別…」
 ネギは生き残ることが出来るのかっ!?


 次回、魔法生徒極楽3匹娘 第61話 ご期待ください!

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